自然で楽なスキーに必要不可欠な 『適正なカンティング』 |
今年SAJの教育本部スキー指導者研修会のテーマに『ハイブリット スキーイングの展開』があります。分かりやすく表現すると、『自然で楽なスキー、つまり地球の重力と人間の筋力を融合させて、省エネでスキーを楽しみましょう』ということがテーマになっています。
1)『ハイブリットスキーイングとは?!』
どうしたら、『楽で楽しく、滑ることが出来るのでしょう?』SAJの具体策として『フェイスコントロール』と『体幹主導と二軸運動意識』の運動要素を提言しています。
フェイスコントロールとは??
スキー面への垂直方向の荷重とその面の傾き、このスキーの面への傾きは体幹主導による二軸運動によって制御される。SAJの表現はかなり難しいですね。分かりやすく表現すると、スキーの面の垂直(真上)にスキーヤーの体幹(体軸)がセットされることで外力とのバランスが効率よく運動できるということです。
体幹主導と二軸運動の意識とは??
スキーヤーはつねに体幹の重さを両脚で支えて滑っています。左右のスキーの間に重力と遠心力の合力が働き続けています。体幹・両脚を通る左右の太い二本の軸の効果的な一対運動によって、スキーヤーの重さは上手く活用されるのです。ちょっと分かりやすいように砕きましたがいかがですか?
全日本技術選手権を三連覇した丸山貴雄はこう表現しています。
『理想とした滑りの柱になるのは太い軸線(肩甲骨から脚までつながる左右二本の軸が重ならないこと)で滑ることにより、スキーヤーの面に対して垂直に荷重できる。垂直に荷重できるとスキーヤーは無駄な動きはなくなり、スムーズに動き出してくれます。二本の軸が重ならないで滑れるスキーヤーはいません。僕もその一人ですが、少しでも重ならないように意識し練習した結果、二本の軸が重なる時間が少ない滑りを表現できるようになった感じがします』と語っています。
ハイブリットスキーイングで一番大事なことは『スキーの真上に立つ』ということになります。
両肩と両腰、両膝、両足裏の八点を結ぶ体のバランスが保たれていることが重要です。
このポジションの効果は
1)自重を伝えることが容易
2)スキー操作が容易
3)外力(遠心力)のやり取りが出来る
4)スムーズな切り替えと落下が得られる
5)体(特に膝・太腿)に負担が少ない
6)長い距離が滑れる。疲れない。
自然で楽なスキーは『スキーの真上に立つ』ことが最低条件になります。
そして、スキーの真上に立つには『適正なカンティング』でなければなりません。
2)『適正なカンティングが必要性』
スキーの真上に立つと言うことは、スキー面の垂直方向に両足裏・両膝・両腰・両肩の八点が結び、体のバランスが保たれていることです。
スキーの真上に位置するには両足裏をスキー面に対し、ブーツを履いた状態でフラットに踏めることが一つ目の条件になります。
一つ目の条件:足裏フラット
ブーツを履いた状態で、母子球側か小指球側に圧が偏ったりせず、どちらも均等に踏める状態が足裏フラットになります。フラットに踏めない場合は両サイドのカント機能パーツを調整します。
スキーの真上に位置するには両膝がスキー面に対して垂直方向、ブーツを履いた状態で膝のセンターが垂直方向に位置することが二つ目の条件になります。
二つ目の条件:膝の位置
スキーブーツを履いた状態で膝のセンターを計測すると、スキー面の垂直方向から2度以上、酷い方は5度ずれているのが実情です。それは、骨格やブーツの特性によるものです。理想の位置は垂直方向(0度~+1度)です。
スキーの真上に立てると言うことは、足裏をフラットに踏め、膝の位置は垂直方向(0度~+1度)に矯正しなければなりません。この工程をブーツチューンアップでいう適正なカンティングと表現しています。
適正なカンティングに矯正され、スキーの真上に立てたことで理想のポジションが得られたことになります。理想のポジションはハイブリットスキーイングの基本となり、自然で楽なスキー、省エネでスキーを楽しむことにつながります。また、上達志向や競技志向のスキーヤーには欠かせないポイントになるはずです。
少し長くなりましたので、少しお浚いを。
『ハイブリットスキーイング』とは『自然で楽なスキー地球の重力と人間の筋力を融合させて、省エネでスキーを楽しみましょう』、
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『自然で楽なスキーを可能にするには、スキー面の垂直方向に両足裏・両膝・両腰・両肩の八点が結んだスキーの真上に立つこと』
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『スキーの真上に立つには、両足裏をスキー面に対し、ブーツを履いた状態でフラットに踏めること』が一つ目の条件
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『スキーの真上に立つには、両膝がスキー面に対して垂直方向、ブーツを履いた状態で膝のセンターが垂直方向に位置すること』が二つ目の条件、すなわち、『適正なカンティング』ということになります。
3)『適正なカンティングに矯正』
1.カスタムインソールの作成
2.スキー面に対して足裏フラットに調整する。
・インナーブーツを取り出したシェル(ブーツ)の中にカスタムインソールを入れ、
センターに足入れし、脛の傾きをアッパーシェルに合わせ、両サイドの隙間をあわせ
る。
3.1回目のカンティング計測(足裏フラットの状態)
①ブーツを履いた状態で膝のセンターに印を付け、センター位置を計測する
②適正な位置(垂直0度~+1度)に対してズレ(何度)を確認する
4.カフの矯正(カント機能調整)とカントパーツ挿入、2回目のカンティング計測
①膝の位置が+(内側に位置する場合)のときは、アッパーカフを外側傾ける
・適正な範囲であるかを計測、範囲でない場合はカントパーツを内側に挿入し計測
②膝の位置が-(外側に位置する場合)のときは、アッパーカフを内側に傾ける
・適正な範囲であるかを計測、範囲でない場合はカントパーツを外側に挿入し計測
5.カンティング・カスタムインソール(コルク付)作成
①コルクの足型成型
②コルクをカスタムインソールに貼り付け→乾くまで1日
③ズレ幅に応じてコルクを研磨する
・膝が外側に矯正する場合→内側を高くしソール面はフラットに
・膝が内側に矯正する場合→外側を高くしソール面はフラットに
6.3度目のカンティング計測と微調整
①カンティング・カスタムインソール(コルク付)を挿入したブーツでフラットに踏めるかを確認
②3度目のカンティング計測→適正なカンティング(垂直0度~+1度)
③微調整→カント機能調整・カントパーツ調整
7.フィッテング調整
①当り・痺れ・緩み→ブーツチューンナップ(シェル出し&削り)
8.フォーミング注入が有る場合は最後に行います。
以上の工程が『適正なポジションを得るためのカンティング矯正』になります。
ここからがスキーの始まり、スタートといっても過言ではありません。
自然で楽な楽しいスキー、そして上達していくスキーヤーにとって、『適正なカンティング』は必要不可欠です。
カンティング計測をされてない方、カンティングに興味のある方、カンティング数値を知りたい方など等、カンティングについて何でもご相談お受けいたしますので、お気軽にご来店ください。
6月23日(土)~の展示予約会が始まると忙しくなるので、G.W明けから展示会までの期間がしっかりじっくり診させて頂くこと可能です。
ご来店の際は、ご使用のブーツとソックスご持参の上、膝の出るスタイル(短パンやジャージ)でご来店ください。
*滑りを収めたDVDをご持参いただければ、カンティングと滑りのレクチャーさせていただきます。
今回は長~い話を聞いていただきありがとうございました。